中学生か高校生の頃、鴻上尚史さんのエッセイをよく読んでいた。このころ鴻上さんは第三舞台で一世を風靡したり世の中で次に流行るものをピンポイントで予測したりしていて、とんでもない人だと思っていたのだが、エッセイの中で、大学のサークルには自分よりも能力のある人がたくさんいたと書いてあって、いったい世の中はどうなっているのかと不思議に思った記憶がある。
それから20年くらい経って、今度は水野敬也さんの書籍とかブログをよく読んでいた時期があった。水野さんといえば「夢をかなえるゾウ」とか「うんこ漢字ドリル」のプロデュースとか、現代文化の牽引役のようなとんでもない人だと思っていたのだが、ブログの中で、高校時代には自分より面白い人がたくさんいたと書いてあって、いったい世の中はどうなっているのかと不思議に思った記憶がある。
そして、先日のイチローさんの米国殿堂入り記者会見ある。
こんな言葉があった。
『才能ある人たちもたくさんいます。僕なんかもうとても比較にならないぐらい才能にあふれた人がいっぱいいます。でもそれを生かすも殺すも自分自身だということです。自分の能力を生かす能力はまた別にあるということは知っておいてほしい。才能があるのになかなかそれを生かせない人はいっぱいいます。』
若いころの自分が聞いていたらなんのことかピンと来なかったかもしれないし、この言葉に心を動かす人も多くないかもしれないが、今のわたしには、長年の不思議状態がだいぶ緩和される素晴らしい言葉であった。
さすがイチロー。