参観日


お客さんから、芸能人の取材のアポが入ったが子どもの授業参観の日と重なるので断ったというエピソードを聞いて、わたし自身の参観日について思い出したことがある。それを書きたい。

わたしが幼稚園の年中さんだったときのはなしだ。
年に1回の父親参観というイベントがおこなわれた。
いつものようになんらかのカリキュラムを受けている教室へ、大人の男性が続々と現れて、部屋のうしろのほうに集まってきていた。
わたしはカリキュラムを受けながら、自分のお父さんはいつ来るだろうとわくわくしていたのだが、教室のどこを見回してもなかなか発見できない。
そのうち「自分のお父さんだけ来てくれなかったんじゃないか」と思って、悲しくなって、みんなの前で泣き出してしまった。

先生が咄嗟の対応で「やすひこくんのお父さんはいらっしゃいますか?」と確認してくれて、うしろのほうのさらにうしろのところからお父さんが顔を出した。わたしは泣き止んだ。そして、自分がここにいる全員に迷惑をかけてしまったことを恥じた。

あんなことで泣いていたわたしがよく人間社会に適応できたなあと感慨が湧く。
あのころのピュアな気持ちは少しは残っているだろうか・・。


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