柔道部物語


わたしは多くのマンガに影響を受けて生きてきたわけだが、さすがにいまから振り返って「あのシーンがわたしの人生を変えた!」と呼べるようなものはそんなにない。

「柔道部物語」の顧問の五十嵐先生は、実績はあるようだけれど強そうに見えない。
実際に身体がなまってしまって腹筋も腕立て伏せもできないらしい。
それなのに、乱取りになると圧倒的に強くて、生徒の誰もかなうことができない。
その理由を生徒に問われて答えた言葉が、
「柔道が得意だったんだ」
というものであった。さらに、
「俺は自分がどうやったら強くなるかってことしか考えてこなかった。お前らがどうやったら強くなるかなんて、知るわけねえだろ」
とつづく。

初めて読んだのは自分が高校生だった頃であるが、今でもこのシーンをよく覚えている。
〈もともとの天才〉や〈努力して花開く〉というパターン以外に、〈柔道(だけ)が得意〉というキャラもあり得るという小林まこと先生の呈示によって、たいして特徴のない自分でも、得意分野を勝手に伸ばしていけばなんとかなるんじゃないだろうかと思うようになった。
そんなに派手なシーンでもないのに、不思議なものである・・。



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