世の中思い通りにいかないことが多いわけだが、それを人生で一番最初に教えてくれたのは「キャプテン翼」であった。
週刊少年ジャンプの他のマンガはただストーリーを追ったりギャグを楽しめばよかったのだが、「キャプテン翼」ではときどき考えさせるシーンがあり、小学生だったわたしは、どうしてもっとうまくやれないのだろうかとやきもきした気持ちになっていた。
まず、小学校編の決勝で、ペナルティエリア外からのシュートは入れられたことのない南葛FCの若林源三を前にして、個人的な理由でなんとしてもペナルティエリア外からシュートを決めようとする明和FCの日向小次郎に対し、事情を知ったまわりのチームメイトが協力的な姿勢を見せたことが、わたしには全体的にさっぱり理解できなかった。贅沢言わずにペナルティエリア内からシュートすることがなんでいけないのか当時のわたしにはわからなかった。
また、優勝したらブラジルへ連れてってくれると言っていたロベルト本郷が、せっかく約束を守って優勝した翼くんに何も言わずに一人でブラジルに帰ってしまったことも、ショックだった。当時現実世界ではアルゼンチンと西ドイツが強かったのでブラジルにこだわる翼くんの姿勢もいまいちわからなかった(ここはブラジルも本当は強いということを知らなかったわたしの勉強不足。)
そして、中学生編の東邦学園のいざこざが、もっともわたしの印象に残っている。
勝手に部活を抜け出して沖縄へ修行に行ってしまった日向小次郎に対して、チームを率いる北詰監督は、ルールを破った罰だということで、試合に出場させないという判断をくだした。日向小次郎はチームが勝つための最善の行動をしているのに、練習に参加しなかったという程度の理由で、チームが勝つ可能性を大きく落とす判断をしたことが、理解できなかった。
結局決勝だけ日向小次郎が出られることになったが、試合のあと、北詰監督は「自分の信念を曲げてしまったから」という理由で辞表を出している。これもホントにわからなかった。北詰監督はなにを生き甲斐にして生きているのだろうかと小学生ながらとても不思議に思ったのを覚えている。
オーバーヘッドキックやドライブシュートはできるようにならなかったけれども、「キャプテン翼」を通してうまくいかないケースをいろいろと疑似体験してきたことが、その後のわたしの人生で随分役に立っているような気がする。ちゃんと読んでおいてよかった。