未熟開拓


小学校3年生のころの国語の授業の思い出。

国語の教科書に載っているおはなしがひととおり終わって、そのおはなしへの感想文を書く時間があって、その次の授業の時間に、担任の先生が、優秀な感想文を何点か選んでみんなの前で読み上げるということがあった。
おはなしの内容は、学校でケンカした男の子がいったんどこかへ行っちゃうが反省して戻ってきて仲直りするというようなはなしであった。
優秀な感想文は、たしか、主人公の男の子に寄り添った回答を示していたり、仲直りしてよかったねといったものだという感じだった気がするが、わたしが書いた感想文は優秀なセレクションには含まれていなかった。

だが、ひととおり紹介したあとに、先生が、「もういっこあるんです」と言って、わたしが書いた感想文を発表してくれた。
わたしの書いた感想文は、主人公の感情とか登場人物とかにまったく配慮していない、主人公の男の子が勝手に冒険を始めるといったような、授業の趣旨にまったくそぐわないものだったのだが、先生がそれを読んでくれて、クラスのみんながわたしの作ったストーリーを楽しそうに聞いてくれた。
わたしは恥ずかしい気持ちとすごくうれしい気持ちがごちゃ混ぜになった不思議な時間を味わった。

かけっこ以外に特に目立ったところのない子どもが、ちょっと自信を身に着けた瞬間であった。


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