富士山麓鸚鵡鳴く


わたしの家は父も母も学校の勉強のことにはいっさい口を出してこなかったのだが、お父さんが例によってヘンなことを言って将来学ぶことを前もって教えてくれるという珍しいこともあった。

「やっちゃん、ふじさんろくおうむなくって知ってるかい?ふじさんろくおうむなく」
「ひとなみにおごれや、ひとなみにおごれや」
前後の文脈関係なく呪文のような言葉を投げかけてきたので、小学生だったわたしは、意味の分からなさに衝撃を受けて、すぐに覚えてしまった。
どうもなにかの数字の暗記のための語呂合わせらしいが、どの科目のどの場面で登場するのかよくわからなかった。

そして、中学生になり、数学の授業で、ついにこの言葉の意味するものを理解する日が来た。
・√5≒2.2360679
・√3≒1.7320508
・√2≒1.41421356
これのことだったのか!と謎が解けた感動を味わった瞬間の喜びは今でも忘れられない。

ちなみに、√2はお父さんには「ひとよひとよにひとみごろ」と教わっていたのだが中学の先生から「いよいよ兄さんご浪人」という覚え方もあるよと厚みを持たせていただいた。
けれども、お父さんのころと違って、平方根の近似値を暗記しなければ解けない問題がテストでは出なくなっていた。
あれから40年くらい経つが、これらの語呂合わせを覚えたこと自体は人生でなにひとつ役に立っていない・・。


トップへ戻る